この季節になると、外を歩くたびに

どこからともなく、

甘い香りがふと漂ってくることがあります。



金木犀の香りです。


姿が見えなくても、

香りだけで気づいてしまう。


そんな存在感のある花は、

なかなかないものですね。


金木犀が咲くのは、

九月下旬から十月にかけて。


小さなオレンジ色の花が、

枝いっぱいに咲き誇る様子は、

近くで見るととても愛らしい。

そしてなんといっても、

その香りが際立っています。

香りというのは不思議なもので、

五感の中でも特に、

記憶と深くつながっているといわれています。


目で見たものや、耳で聞いたものより、

香りの記憶の方が、

より鮮明に、より感情とともに

よみがえってくることがあるのだそうです。

経験のある方も、多いかもしれませんね。

金木犀の香りを嗅ぐたびに、

ある特定の場所や、

その頃の自分のことを思い出す。

そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。


どこかからの帰り道だったり、

誰かと歩いた秋の夕暮れだったり。


言葉では説明できないのに、

香りは一瞬で、

その頃の空気ごと連れてきてくれる。


そんな香りの力には、

あらためて驚かされます。


金木犀の花は、

一度に一斉に咲いて、

雨が降るとさっと散ってしまいます。


その短い間だけ、漂ってくる香りだからこそ

より一層、心に残るのかもしれません。


今年も金木犀の季節がやってきたら、

少しだけ立ち止まって、

その香りのもとで深呼吸をしてみてください。

忙しい毎日の中でも、

季節の香りが運んでくる

懐かしさや穏やかさに、

ほっと心がほどける瞬間を感じられるはずです。


このやさしい香りとともに、

皆さまの秋が、

温かく穏やかなものになりますように。