十月も下旬を迎え、

街路樹の葉がほんのりと色づき始めました。

緑一色だった景色に、

黄色や橙色が少しずつ混ざり始める。

この「移ろいの瞬間」こそが、 

秋の醍醐味であるように感じます。


日本には、色を表す言葉が

驚くほどたくさんありますね。

紅色、朱色、橙色、山吹色。

黄金色、琥珀色、栗色、茶色。

それぞれに絶妙な違いがあり、

昔から人々が、いかに自然の色彩を

細やかに愛でていたかが分かります。


特に秋は、一年で最も

色彩が豊かになる季節です。

同じ木でも、葉によって

色づく速さが違うことから、

一本の木の中に何色もの葉が混在する。

その美しいグラデーションは、

まさに自然のみが生み出せる芸術ですね。


紅葉は、気温の変化によって

その色の濃さや美しさが変わるといいます。

寒暖の差が大きいほど、

鮮やかな色になるのだそう。

厳しい環境だからこそ、

より美しく輝くことができる。 

それはまるで、人の生き方にも

通じているようです。


昔から日本人は、紅葉を愛でるために

わざわざ山や寺社を訪れる習慣がありました。

ただ見るだけではなく、

その場所で過ごす時間そのものを

楽しんでいたのでしょう。


色づいた木々の下を歩き、

落ち葉を踏みしめる音に耳を傾ける。

そんなゆったりとした時間の流れが、

心を穏やかにしてくれます。

また、秋の色彩は木々だけではありません。

澄んだ青空、白い雲、

夕暮れ時の茜色のグラデーション。

そして、柿やリンゴの赤、

栗の茶色、さつまいもの紫色。

秋の食卓も、まさに色彩の宝庫です。

色とりどりの景色を眺めていると、

自然の豊かさに改めて気づかされます。

同じ色が二度とないように、

同じ瞬間も二度と訪れない。

だからこそ、今この瞬間の美しさを

大切にしたいと思うのです。

これから本格的な紅葉の季節を迎えます。

もし機会があれば、少し足を延ばして、

秋の景色を訪ねてみてはいかがでしょうか。

写真で見るのも良いけれど、

実際にその場所に立ち、

空気を感じながら眺める紅葉は、

また格別なものです。

秋の色彩が、皆さまの日々を

彩り豊かにしてくれますように。

その美しさが、心に温かな思い出として

残っていきますように。