全国的に梅雨明けが発表され、いよいよ本格的な夏のはじまりですね。

まだ大合唱とはいかないものの、

近くの木々からは、ぽつぽつと蝉の声が聞こえてきます。

まるで、夏の扉をそっと開けるような小さな合図です。


蝉の声を聞いていると、いつも不思議な気持ちになります。


長い時間を土の中で静かに過ごし、

ほんの短い夏のあいだだけ、地上に出て命を全うする。

そんな蝉の姿を思うと、ただの季節の音ではなく、

何か大切なメッセージのようにも感じられます。


子どもの頃、蝉の声を聞きながら迎えた夏休み。

朝の光、汗ばむ午後、風鈴の音が涼を運ぶ夕暮れ。

大人になった今でも、蝉の声を聞くと、

そんな記憶がふと、心の奥からよみがえってきます。


耳をすませば、風に揺れる葉の音や、

遠くを走る車の音、子どもたちのはしゃぐ声。


日々の暮らしの中に、さまざまな「生きている音」が溶け込んでいることに気づきます。


私たちのまわりには、あたりまえのようでいて、

実はかけがえのない瞬間が、静かに流れています。


現代の生活では、エアコンの効いた室内で過ごすことが多く、

「夏の音」をじっくりと聞く機会も少なくなってしまいました。


でも、時々は窓を開けて、外の音に耳を傾けてみるのもいいものです。


季節は、いつも何も言わず、自然と姿を変えていきます。

それを受けとめる私たちもまた、どこかで少しずつ、変化しているのかもしれませんね。


この夏、どうか心の奥にそっと風が吹き抜けるような、

そんな穏やかな時間が、あなたのもとにも訪れますように。


蝉の声とともに始まる夏を、

五感を通して、味わっていただけたらと思います。